月に一度、第一線で活躍されている研究者をお招きしてスペシャルセミナーを開催しています。
関心のある方は是非ご参加ください。セミナー終了後には簡単な懇親会も行っております。
■ 日時:4月26日 16:00-
■ 場所:京都大学北部キャンパス 農学部総合館 W506号教室
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岩崎 貴也 博士 (京都大学生態学研究センター学振PD) |
分布域の広い野生生物は、その範囲内の多様な自然環境に対して各地域で独立に適応していると思われる。しかし、どのような遺伝的変化によって
その適応がもたらされたかという遺伝的基盤を明らかにした研究はまだ少ない。また、適応遺伝子が「どの地域でどの程度の適応を担っているか」
という局所適応の地理的パターンを推定した研究に至っては、シロイヌナズナやポプラといったモデル生物におけるいくつかの研究例以外、ほとん
ど無いのが現状である。
本研究では、上記のことを明らかにするため、東アジアに広く分布するアブラナ科の植物コンロンソウに着目した。まず、分布域全体からの高密度
サンプリング(200地点396個体)と、RAD-Seq解析で得られたゲノムワイドSNP(8,308 SNPs)の情報によって、大陸系統-日本系統の間の大きな遺
伝的分化や、その中での各地域間での小さな分化を検出した。更に、各採集地点の環境情報(気温、降水量、標高など)を用いたゲノムワイド関連
解析によって、中立な遺伝的分化から大きく外れて、特定の環境要因に選択を受けて分布していると思われる非中立SNP(近傍に適応遺伝子が存在
する可能性が高い)を複数検出した。それらのSNPsの周辺には、病原菌耐性遺伝子や開花制御に関わる遺伝子FLCなど、何らかの局所適応に関わる
可能性が考えられる機能を持つようなものも多く含まれていた。これらの機能遺伝子が実際にどのようなメカニズムで局所適応に関わっているかを
明らかにすることはまだできていないが、これらにかかっていると思われる自然選択の様子は非中立SNPsの分布パターンから推定可能である。本発
表の最後には、これら非中立SNPsの分布情報を用いて分布適地モデリングを行い、この種における局所適応の地理的パターンを地図上で推定した結
果についても紹介する。
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※ 京都大学北部構内、農学部総合館の位置は以下のリンク(京都大学HP)から地図をご参照ください。
―京都大学吉田キャンパス構内配置図
―北部構内マップ
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