過去のスペシャルセミナー情報

日時:2013年7月26日 (金) 16:00-
場所:京都大学北部キャンパス 農学部総合館 W306号教室



「サンショウウオに迫る外来種の脅威:京都賀茂川のオオサンショウウオの現状」
吉川 夏彦 (京都大学人間・環境学研究科)
 オオサンショウウオは愛知以西の西日本の河川に生息する日本固有種で、最大で全長1.5mにも達する世界最大の両生類の一つである。国の特別天然記念物にも指定されて手厚く保護されており、日本のみならず世界的にも非常に有名な生物である。そんなオオサンショウウオは、分類学的には両生類の中の有尾類と呼ばれるグループに含まれ、山地に生息する小型のサンショウウオ類や、水田などでよくみられるイモリに近縁な仲間である。京都市を流れる賀茂川は、古くからオオサンショウウオの生息地として知られている。しかし近年、演者らの所属する研究室の調査により、賀茂川のオオサンショウウオは非常に深刻な問題を抱えていることが徐々に明らかになってきた。それは人為的に移入された中国原産のチュウゴクオオサンショウウオ(以下中国産)と在来のオオサンショウウオ(以下日本産)の交雑問題である。マイクロサテライトマーカーを用いた調査の結果では、賀茂川産オオサンショウウオの多くは両種の交雑に由来する雑種であり、日本産はほとんど発見できなかった。そして、この問題は賀茂川だけでなく他の水系へも拡散しつつあることもわかってきた。本発表では、最近の賀茂川とその周辺のオオサンショウウオの現状について紹介し、今後のオオサンショウウオの保全の在り方について議論していきたい。