過去のスペシャルセミナー情報

日時:2014年5月30日 16:00-
場所:京都大学農学部総合館W420号室



雑草の逆襲 ―除草剤抵抗性の進化―
冨永 達 氏 (京都大農学研究科
雑草、とくに耕地雑草は、常に除草圧に曝されている。水田雑草のタイヌビエ は、イネ栽培期間中の数回にわたる「ひえ抜き」が延々と繰り返されてきた結 果、イネの外部形態への擬態やイネの出穂に同調して出穂する特性を獲得した。 雑草の防除手段が、手取り除草から除草剤による防除に置き換わると、いくつか の雑草は除草剤に対する抵抗性を獲得した。  除草剤に対する抵抗性は、除草剤が標的とする酵素の立体構造の変異や過剰発 現、代謝機能の向上、吸収・移行阻害などによって付与される。このうち、標的 酵素の立体構造の変異は一塩基置換によって生じ、最も多く報告されている。  本セミナーでは、ミズアオイ属の水田雑草、コナギとミズアオイにおけるアセ ト乳酸合成酵素阻害剤の一種であるスルホニルウレア系除草剤(SU剤)に対する 一塩基置換による抵抗性獲得の事例を紹介する。コナギとミズアオイはともに異 質4倍体で、コナギはおもに自殖し、ミズアオイは他殖する。コナギでは日本各 地の水田でSU剤抵抗性の出現が報告されている。ミズアオイは西日本では絶滅の 危機に瀕しているが、東北ではSU剤抵抗性を獲得した個体が一面に繁茂している 水田もみられる。生活史特性が異なるコナギとミズアオイを例に、雑草の除草剤 抵抗性の進化に関する議論を深めたい。