日時:2011年12月21日 16:00-
場所:京都大学農学部総合館 W420号室
-屋久島の高山性ミニチュア植物を用いて- |
篠原 渉博士(理学研究科 生物科学専攻 生物多様性特別講座) |
自然界の適応進化への分子遺伝学的アプローチにはさまざまな困難がつきまとう。
世代交代が早いことや、比較のための近縁種が存在し、それらが交配可能であること
が最低限必要である。また多くの場合、適応形質に対する自然選択圧を特定すること
も簡単ではない。
私たちのグループでは屋久島の高山性ミニチュア植物をもちいて、適応形質とその分 子メカニズムまでを統一的に解明することを目指している。屋久島の高山性ミニチュ ア植物のひとつであるヒメコナスビとその低地の普通品であるコナスビの野外集団の 比較から、ヒメコナスビは器官の中で特に葉が小型化していることを明らかにした。 また細胞レベルの比較から、ヒメコナスビは細胞の大きさと数の両方が減少すること で葉を小型化していることがわかった。ではこれらの形質は遺伝的なバックグラウン ドをもつのだろうか?またこれらの形質は本当に適応形質なのだろうか?これらの疑 問に答えるためにおこなった共通圃場実験と中立的遺伝マーカーの解析を紹介し、さ らにF2集団の解析、次世代シーケンサーをもちいた葉を小型化する遺伝子の特定に向 けた取り組みや、コナスビ類以外の屋久島の高山性ミニチュア植物の解析についても 紹介する予定である。 |