過去のスペシャルセミナー情報

日時:2012年7月20日 16:00-
場所:京都大学農学部総合館W502号室



輸入穀物に混入する除草剤抵抗性雑草の国内の定着・拡散過程の評価
下野 嘉子 氏 (京都大学農学研究科雑草学研究室 助教)
 穀物には多種多様な雑草種子が混入しており、穀物貿易は外来植物の主な侵入経路の1つとして考えられている。 日本は大量の穀物輸入国であり、輸入穀物に混入して持ち込まれた外来植物が国内の農耕地で問題となっているとの報告 はあるものの、 その定着や拡散について定量的な評価はなされていない。 近年、海外の穀倉地帯では、除草剤に依存した雑草管理を続けてきた結果、 除草剤抵抗性雑草の発生が多数報告されている。 実際、輸入穀物の中にも除草剤抵抗性を持つ個体が含まれている。 特にドクムギ属(Lolium spp.)は小麦への混入率が高く、 混入種子の7割がスルホニルウレア系除草剤 (ALS阻害剤)に対する作用点変異型の 抵抗性を持っていることが明らかと なっている。この抵抗性形質は核にコードされた優性の1遺伝子に支配されているため、 ドクムギ属のように高い他殖性を 示す種では、交雑によって抵抗性形質が拡散しやすい。ドクムギ属は、日本において牧草や緑化植物として 広く利用されている他、路傍や畑で雑草化していることから、抵抗性形質を持つ個体が国内に広まると、場所によっては雑草管理コストの 増大につながる可能性がある。そこで、国内の12の重要港湾に定着しているドクムギ属集団を対象に、抵抗性個体の 定着割合を調査した。 また、茨城県鹿島港周辺において、抵抗性個体の定着割合の年次変化を4年間調査し、その場所での 持続性、交雑による拡大の可能性について検討した。