日時:2009年3月4日 16:00-
場所:京都大学農学部総合館S128室
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瀬戸口 浩彰 氏(京都大学大学院・人間・環境学研究科) |
お招きいただいたセミナーでは、まず私の研究室で展開している研究の概略について話をさせていただきます。
私の研究室の主たる関心の対象は、植物の進化多様性の背景を遺伝的に把握することです。生物の種分化は、大き
くは異所的種分化と側所的種分化(あるいは同所的種分化)によってもたらされると考えられてきました。もう十
分に研究されてきた感のある系統地理研究は、それ自体が自然史研究として魅力的なものではありますが、同時に
異所的な種分化をもたらす大きな要因として捉えることも出来ます。日本列島においては、第四紀後半の気候変動
が、このような異所的種分化をもたらしたと考えられます(このことは言うまでもありませんが)。その一方で、
同じ場に生育する生物種に対して、異なる選択圧が強力にかかった場合には、側所的種分化が進むと考えています
。この場合には、「育種」にも似た、phenotypeの急速な変化が、生殖隔離を伴わずに進行すると考えています。
それぞれの事例を、ご挨拶代わりに「簡単に」ご紹介したいと思います。
引き続いて、近畿に生活する私たちの身近な場所における系統地理と種内分化の話として、琵琶湖に生きる海浜 植物の陸封について紹介をさせていただきます。これまでに、琵琶湖の湖岸に生育するハマヒルガオ、ハマエンド ウ、タチスズシロソウについて調べてきたところ、海岸の集団と琵琶湖の集団が異質なものであることが明らかに なってきました。DNA分子データや形態、生理、含有成分のデータにもとづいて、これらの知見をまとめてみます。 また、一部の海浜植物は、昔に較べて生育地と個体数を大きく減じており、絶滅が危惧されています。こうした植 物の保全に対する取り組みについても紹介をさせていただきます。 |