日時:2018年 1月16日 16:00-
場所:京都大学農学部総合館 W322号室
「混植によって改変されるシロイヌナズナ属植物と植食者の関係:多型の維持から虫害制御へ」 |
佐藤 安弘 博士 (龍谷大学農学部植物生命科学科・日本学術振興会特別研究員PD) |
野外の植物集団では、植食者に対する防御形質に遺伝的変異がみられる。このような状況では、複数の遺伝子型が混在していることによって、特定の遺伝子型が虫害を逃れられたり、集団全体として虫害が抑制されたりすることがある。本セミナー前半では、ダイコンサルハムシ(Phaedon brassicae) を介したハクサンハタザオ(Arabidopsis halleri subsp. gemmifera)の有毛・無毛型間の見かけの相互作用について紹介する。この系では、GL1遺伝子に基づくトライコーム有無のニ型が報告されていたものの、ニ型の維持機構については分かっていなかった。演者らは有毛型が少数派のときにダイコンサルハムシに食害されにくくなることを発見し、こうした遺伝子型間の見かけの相互作用が負の頻度依存淘汰を介して多型の維持に寄与することを明らかにした(Sato& Kudoh 2017; Sato et al. 2017)。後半では、シロイヌナズナ(A. thaliana)野生系統のゲノム情報を用いて混植すべき系統を予測する試みについて紹介する。一連の研究から、植物の多型の維持機構から虫害制御に向けた応用まで幅広く議論したい。 |