過去のスペシャルセミナー情報

日時:2012年5月29日 16:00-
場所:京都大学農学部総合館W502号室



近畿地方の低標高域における温帯性針葉樹-特にスギ・ヒノキ-の存在と、そこから派生するいくつかの問題について
大住克博 博士 (森林総合研究所関西支所)
林業史や植生史の分野では、縄文前期から平安時代までの西日本には、スギやヒノキなどの温帯性針葉樹が広く低地に 生育していたことと、それらが、古代以降の伐採により消滅していったことが明らかにされている。しかしこれらのことは、 植生学や造林学、森林生態学においては、未だに明瞭には受容され、あるいは考慮されていない。 巨木を交えていたと思われる温帯性針葉樹が、低地においてどのような森林を形成していたのか、具体的なイメージが 得られていないことも、その一因となっているだろう。
 セミナーでは、西日本における古代以降のスギ・ヒノキの分布や衰退の過程について、植生史や林業史の資料を基に概観する。 その上で、温帯性針葉樹が広く存在していたとする場合に、そこから生まれる西日本の森林帯や、森林の構造に関するいくつかの 問題について提起する。また演者らは、最近、琵琶湖湖西の低標高地に天然生林と推定されるスギやヒノキの森林を見出し、 調査を開始したので、その途中結果も紹介したい。