日時:2015年10月29日 16:30-
場所:京都大学北部キャンパス 農学部総合館 W306号教室
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森光 由樹 博士 (兵庫県立大学 / 兵庫県森林動物研究センター) |
(1) 画像スキャニングシステム・バイオロギング
発表者は、これまで、野生動物に搭載する超小型動画カメラの開発を行い、その成果について学会等で報告してきた。対象種は主にツキノワグマ、ニホンジカ、ニホンザルである。夜間の映像収集は、これまで困難であったが、小型赤外線(IR LED)をカメラに搭載することで撮影が可能となった。ツキノワグマに装着した解析では、移動、休息、採食、繁殖等の行動が動画解析から明らかになった。特に、採食物の種判定において有力な方法である。GPSによる位置情報と合わせて解析することができれば、生息環境の解析にも用いることが可能となる。 (2) 個体群管理を進めるための遺伝情報 特定鳥獣保護管理計画による対象種の管理は、個体群または、地域個体群を単位に行われていることが多い。個体数が少なく、連続分布から孤立した地域個体群は、絶滅する可能が高いと考えられ、管理上、捕獲を制限する必要が求められる。反対に個体数が多く、広い地域に連続して分布している地域個体群は、絶滅する可能性は低いと考えられ捕獲による個体群管理も実施される。現在、地域個体群を決定する要因は、主に分布情報が用いられている。生態学では、個体群は、同じ地域に生息する同種の集合であり、各個体は遺伝子プールを共有する集団であると定義されている。現在、ニホンザルの地域個体群の遺伝構造を示す研究は少ないが、各々の地域個体群は、遺伝子プールを共有している可能性が高いと考えられ管理の単位として用いられている。しかし、もし仮に、連続分布した大きな地域個体群であっても、大きな河川や山脈が障害となって地域個体群間でオスの移出入がなければ、繁殖の交流はなくなり、遺伝子プールを共有することはなく、別の地域個体群として考える必要がある。反対に分布から著しく孤立している地域個体群であっても、オスの移出入が地域個体群間で頻繁に起こり、繁殖の交流があれば、遺伝的プールは共有されていることになり、分布情報から決められた各々の孤立した地域個体群を、一つの地域個体群として考えることもできる。そこで、遺伝的な交流を視点に、地域個体群の考え方を整理し、ニホン・Uルを管理する単位について検討する。 |