日時:2010年12月17日 16:00-
場所:京都大学農学部総合館 W306
その起源と適応分化メカニズムの検証 |
三井 裕樹 氏(京都大学大学院・人間・環境学研究科) |
さまざまな生態環境(気候,資源,生物間の相互作用など)への適応は,生物の新しい種を生み出す原動力である.
とりわけ,対照的な環境に適応した集団間で,分断化を促す自然選択圧を受けることで,(移入個体や雑種の生存不能
などによって間接的に)集団間の遺伝子流動が制限されるプロセスは“生態的種分化”と呼ばれる.このような生態的
種分化は,同所的かつ数百〜数千世代というごく短期間にも起りうることが理論的にも示されてきている.演者らは,
洪水による激しい濁流に晒される一種の極限環境に適応した渓流沿い植物と,隣接する林床帯に分布する近縁種につい
て,両者の適応分化と生殖隔離のメカニズム,さらに種分化の起源を検証した.具体的にはキク科の多年草であるモミ
ジハグマ属を用いて,渓流種と林床種について交雑帯の詳細な集団解析と,複数の核マーカーを用いたコアレセント解
析を行った.その結果,適応分化と種分化の起源は最終氷期〜後氷期にかけてというごく最近の出来事であった可能性
が示されてきた.本講演ではこれらの結果を紹介し,渓流沿い植物の生態的な種分化プロセスについて,さまざまな分
化段階を示す複数の種の例もまじえて考察したい.
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