日時:2010年10月21日 16:00-
場所:京都大学農学部総合館 W302号室
~意思決定支援のための分析手法の確立~ |
岸本 康誉 氏 (兵庫県立大学/兵庫県森林動物研究センター) |
日本各地で,シカの個体数増加に伴う森林の種組成や構造の変化,農業被害の深
刻化が多数報告されている.森林生態系保全および農業被害軽減の観点から,シ
カの適切な管理が急務となっており,個体数管理は多くの都道府県のシカ保護管
理における重要施策の一つとなっている.
野生動物管理の上で,適切な個体数管理を進めるにおいては,意思決定や合意形 成に必要な管理の目標値や計画の設定とその評価が重要である.そのためには, 農業や自然植生の被害に対するシカの影響を定量化するための要因分析手法と, 個体数推定などの手法の確立が求められる. そこで,兵庫県で経年的に取得されてきた集落単位での農業被害の程度,林分単 位での森林下層植生の衰退程度と狩猟者への出猟時のシカの目撃情報から得た密 度指標をもとに,シカ密度と被害程度の関係性の定量評価行うとともに,複数の 密度指標を用いた個体数推定を行った.野生動物についての密度指標や,被害に 関する指標には,観測誤差を含むさまざまな誤差が含まれているため,分析にあ たっては,複雑な誤差変動を明示的に組み込んだ階層ベイズモデルなどを構築し た.その結果,シカの密度増加と被害程度との関係性が明らかになったことに加 え,複雑な誤差を考慮した個体数推定が可能となった. 本公演では,被害に影響を及ぼす要因分析結果と,個体数推定結果に基づいた捕 獲頭数の設定など,個体数管理における意思決定支援のための実務的な技術開発 について紹介する. |