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日時:2011年6月22日 16:00-
場所:京都大学農学部総合館W306室



小笠原在来植物の環境適応と外来樹種の生理特性
石田 厚 (京都大学生態学研究センター)
小笠原諸島は東京から約1,000 km南にあり、第三紀という比較的 古い時代に海底火山 が隆起して出来き、一度も大陸とつながったことがない海洋島である。火山性の土壌 で年降水量は約1,200 mmと 比較的少ないことから、乾性低木林という日本に例をみな い森林が広がっており、また樹木種の約70%が固有種である。島の尾根部では 土壌が 浅く、植物は乾燥や貧栄養にさらされるため、樹木の背丈は1m以下と低い。一方谷部 では土壌が発達し、樹高さ10mを超える。乾性低木林は多くの樹種が共存し、常緑樹で あるが葉寿命も3ヶ月から3年と樹種により大きく異なる。また同じ樹種でも狭い範 囲で樹高や葉の形態などが大きく変わっている。そこ小笠原は、乾燥、低栄養塩、強 光に対し樹木がどのように適応しているのか、また様々な特性をもった樹種がなぜ共 存していけるのかを調べてきた。また明治以来の入植により、さまざまな動植物が島 内に持ち込まれた。外来樹種の一部は、特に台風かく乱後に天然林への進行を進めて いる。なぜ外来樹種が分布拡大できる要因は、ニッチのあきや、外的の不在などが考 えられるが、ここでは撹乱後に対する稚樹の成長生理特性から、外来樹種の分 布拡大 要因を検討してきた。小笠原は、この夏にユネスコの世界自然遺産への登録の可否が 決議される。これらの在来樹種や外来樹種の環境適応性の研究は、環境変化に対する 島嶼生態系の将来変化を予測し、適切な森林管理指針をたてていくことに重要である。