日時:2010年7月14日 16:00-
場所:京都大学農学部総合館 W306号室
〜集団サイズの効果と集団内の時空間的不均一性〜 |
花岡 創 氏(名古屋大学大学院生命農学研究科 研究員) |
花粉を介した遺伝子流動は,植物の繁殖のみならず遺伝的多様性や遺伝構造を
決定する重要な要因である。近年は多くの植物種において集団の縮小・孤立化が
生じており,このような状況が花粉を介した遺伝子流動にどのような影響をおよ
ぼすのかについて注目されている.また,集団内における花粉を介した遺伝子流
動は各個体の開花量やフェノロジーなどの生態学的要因,あるいは風向・風速な
ど多くの環境要因が作用することによって決定される.それゆえ,オス(花粉
親)の相対的な繁殖成功度には空間的なばらつきが生じると考えられるが,既存
のモデルではそれを柔軟に表現することが困難であった.
演者らは,日本の冷温帯を代表する風媒の落葉広葉樹であるブナを対象に,大 集団(約500個体), 小集団(約30個体), 孤立グループ(10個体以下)それぞれにお いて花粉を介した遺伝子流動のパターンと花粉プール多様性を明らかにすること で,集団の縮小・孤立化が花粉を介した遺伝子流動におよぼす影響を検討した. また,階層ベイズ法を用いて個体間距離だけでは説明できない複雑な花粉散布パ ターン(オスの相対繁殖成功度)を空間的に表現するモデルを構築し,大集団に おける花粉を介した遺伝子流動の空間的異方性を検出した. 本講演では,これらの研究結果について詳細に紹介するとともに,今後の花粉 を介した遺伝子流動研究の方向性についても議論したい. |