日時:2008年6月20日 16:00-
場所:京都大学農学部総合館 W306
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堂囿いくみ (首都大学東京) |
<マルハナバチ送粉系における花形態の多様化>
一般に、花の形質―形・色・構造・匂い―は、最も送粉効果の高い送粉者の形質と適合し、 両者は一対一のspecialized relationshipへ進化すると考えられている。しかし、実際に観察される送粉系では、 一対一の関係は希で,植物は複数の送粉者に依存している場合が多い。 つまり花形質の進化を理解する上で、複数の送粉者との関係を理解することは重要である。 温帯・寒帯域の虫媒花の多くは、マルハナバチ(ミツバチ科)によって送粉され、その花形質は多様である。 マルハナバチ媒花でも、多くは複数種のマルハナバチに送粉される。では、複数の送粉者の存在は、 植物の花形質にどのような選択圧を生じさせ、花形質の多様化にどのように関わっているだろうか。 本講演では、最初に花筒長に経時的・地理的変異がみられる植物と、口吻長の違う2種のマルハナバチとの関係が、 花形質の多様化にどのように関わっているのかについて紹介する。 <送粉者間の相互作用が植物の繁殖に与える影響> 密接な関係を築いてきたマルハナバチと植物の送粉系に、外来送粉昆虫が侵入した場合、 在来植物の繁殖にどのような影響をおよぼすだろうか。 次に、近年北海道で野生化が進んでいる外来種セイヨウオオマルハナバチの訪花が、 在来のエゾエンゴサク(ケシ科)の種子生産にどのように影響するかを調査した結果を紹介する。 エゾエンゴサクの花は長い距をもち、送粉効果の高い在来マルハナバチに送粉を依存していた。 一方、野生化したセイヨウオオマルハナバチは送粉効果の低い盗蜜訪花を行っていた。興味深いことに、 花序あたりの盗蜜花の割合が高くなると、在来マルハナバチの訪花頻度が低下し、その結果、 盗蜜の割合が高いエゾエンゴサク集団では種子生産が低下していた。 つまり外来種が在来種の訪花行動を変化させるというマルハナバチ間の相互作用を通じて、 エゾエンゴサクの種子生産が低下したと考えられた。 |