日時:2018年 5月31日 16:00-
場所:京都大学農学部総合館 W306号室
「1塩基レベルの変異を環境DNAメタバーコーディングデータから検出する」 |
田辺 晶史 博士 (龍谷大学 科学技術共同研究センター 研究員) |
淡水生態系は人間活動の影響を受けやすく、現状の把握と保全に向けた施策の策定が最も急がれる生態系の一つである。環境DNAメタバーコーディングによる生物相の解明は、生物の採集という、侵襲的で労力のかかる作業を行うことなく生物の情報が得られるため、そのような淡水生態系の保全に向けて大きな期待を集めている。既に様々な生物の検出系が確立されており、応用も進みつつあるが、使用する高スループットシーケンサの解読精度の問題のため、1塩基レベルの変異を検出することは、参照配列が完全に得られている場合を除いて容易ではない。そんな中、近年になって微生物メタバーコーディングの分野で、エラーの起きやすさを推定することでエラーの有無を判別し、エラーのない配列を復元する手法が提案され、環境DNAメタバーコーディングにも応用できるのではないかと思われた。しかしこれらの手法では、アバンダントな配列と1塩基しか違わないレアな配列は、たとえ本当に存在するものだったとしても、アバンダントな配列由来のエラーのある配列として判定されてしまうことが判明した。これは、解読する深度を上げても解決しない。そこで、これらの手法とは全く異なる原理に基づく、環境DNAメタバーコーディングデータ専用のエラー検出・除去手法を開発し、真の配列がわかっている3つのデータにおいてうまく動作することを確認した。本講演では、環境DNAメタバーコーディング法の現状を概観し、鍵となるいくつかの手法を解説した上で、上記手法、および上記手法を応用して行ったある魚種の遺伝的多様度の河川内での分布調査の結果を紹介する。 |