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- カシノナガキクイムシの寄主木及び穿孔部位選択様式の解明
- 研究種目
- 科学研究費補助金 基盤研究(C)
- 研究期間
- 平成22年度 〜 平成24年度
- 課題番号
- 22580162
- 研究代表者
- 山崎 理正(京都大学農学研究科)
- 連携研究者
- 伊東 康人(兵庫県立農林水産技術総合センター)
- 研究成果概要
- 近年、日本各地でブナ科樹木が集団枯死する被害(ナラ枯れ)が発生し、問題になっています。ナラ枯れは、体長わずか 5mm のカシノナガキクイムシ Platypus quercivorus が新たな寄主木に移動分散する際に、病原菌 Raffaelea quercivora を運搬することで引き起こされています。被害を最小限に食い止めるためには、カシノナガキクイムシが森林内でどのように寄主木を選択し、寄主木の中でどこに穿孔するかをどのように決定しているかを明らかにする必要があります。
本研究では、カシノナガキクイムシが羽化脱出してから新しい寄主木に穿孔するまでを3つの段階に分けて考えました。最初は多様な森林において寄主木を検出する段階、次はいくつかの寄主木候補の中から繁殖に好適な寄主木を選択する段階、最後は選択した寄主木の中で繁殖成功を見込める最適な穿孔部位を決定する段階です。各段階で、カシノナガキクイムシは何を頼りに検出や選択を行っているのでしょうか。
最初の段階については、森林内における寄主木候補の密度が重要で、小さなスケールでは寄主木候補が集中している方が、大きなスケールでは寄主木候補の密度が低い方が、カシノナガキクイムシのアタックを受ける確率は高くなっていることが明らかになりました。直上の樹冠密度もアタックを受ける確率に影響を及ぼしており、カシノナガキクイムシが何らかの方法で樹冠密度が高い部位を検出している可能性が示唆されました。
次の段階では、周囲の穿孔され始めた木の密度が高いほど、その後マスアタックを経て枯死に至る確率が高いことが明らかになりました。マスアタックとは、キクイムシが集合フェロモンで同種他個体を誘引し、集団で穿孔することで寄主の抵抗性を打破する現象です。本研究によって、マスアタックが個木単位でなく寄主木集団単位で起こっていることが示唆されました。
最後の段階では、カシノナガキクイムシは初期には樹幹下部に集中して穿孔するものの、下部の穿孔密度が高くなってくるに従い穿孔箇所は上部に移行していくことが分かりました。また、穿孔密度が中程度の時に、カシノナガキクイムシの繁殖成功度は最大になることも明らかになりました。
各段階の研究成果について、詳しくは Phase 1、Phase 2、Phase 3 の各頁を参照して下さい。